2021年12月16日木曜日

フィプセンの深い話


今回はフィプセンとそのバリエーションゲームを紹介します。

かなり濃い話になりそうですので、最初によく日本で遊ばれているフィプセンのゲームの説明をします。
現在日本で遊ばれているフィプセンは、プリスドルフのルールと思われます。

インデックス

長い文章になりますので、インデックスを作りました。
・インデックスはこちら
<フィプセン>


フィプセン(Fipsen)

フィプセンは18世紀後半から19世紀初頭に登場するトランプゲームです。
ただこのゲームは色々な名前で呼ばれていたようです。
フィプセンは現在でもドイツのシュレースヴィヒ=ホルシュタイン州でプレイされており、2017年ドイツのピンネブルグで、2020年ドイツのグローナスペでフィプセンのトーナメントが行われたそうです。
トーナメントが行われた会場は、2021年3月末で閉鎖されたようです。

👉人数:3.4人。個人戦になります。
まず4人で説明します。3人の時については、後述します。

👉使用するトランプ:通常のトランプより次のカードだけ使用します。
  • ダイヤ:7
  • それ以外のスート:7,8,9,10,J,Q,K,A(2~6を除きます)

👉目的:宣言したビッドを成功させ得点をとること。
このゲームは終了条件が特に決まっていません。
プレイする前にディール数など決めてください。

👉カードの強さ:A>K>Q>J>10>9>8>7
このゲームは時計回りに進行します。


ディール

じゃんけんなど適当な方法で最初のディーラーを決めます。
以降ディーラーは時計回りに持ち回りで交代します。
カードの配り方は次の通りです。
  1. ディーラーは時計回りに各プレイヤーに3枚ずつ、裏向きのまま配ります。
  2. その後ディーラーは、テーブルの中央に裏向きのまま2枚起きます。このカードを「スカート」と呼びます。
  3. さらにディーラーは、時計回りに各プレイヤーに2枚ずつ配ります。
  4. 余った3枚は裏向きのまま、テーブルの脇に置きます。
各プレイヤーの手札は5枚になります。

ビッド

フィプセンのビッドは、1対1の勝ち抜き形式で行います。
ディーラー左隣のプレイヤーが最初の「親」になります。
親はパスかビッドを宣言します。ビッドをする場合は、以下の方法のいずれか1つを選択して宣言します。
  • 最低2以上で、自分が取れるであろうトリック数を宣言する
  • 最低2以上で自分が取れるトリック数に加え、オプションを付ける
  • 特殊な宣言をする
オプション
オプションは次の3つになります。オプションは複数付けることができます。
オプションの宣言を1つ追加するごとに得点が倍になります。
つまりオプション1つで2倍、オプション2つで4倍、オプション3つで8倍になります。
  • ルーテン:切り札をにする(は1枚しかありません)。手札にがなくても宣言できます。
  • ハンド:ハンドの2枚と交換しないでプレイする
  • ドゥルヒ:ビッドで宣言したトリック数に関係なく、全5トリックを取る
ビッドで5を宣言した場合、ドゥルヒは自動的につきます。
親がビッドした後、親の左隣のプレイヤーはそれより強いビッドを宣言したするか、またはパスをします。
より強い宣言をする場合は、親の宣言したトリック数より多い数を宣言するか、同じトリック数でオプションを付けるかになります。
ただしオプションは最大3つしか付けられません。
親の左隣のプレイヤーがより強い宣言をした場合、親は次のうちいずれか1つを宣言します。
  • より強いビッドを宣言する
  • ホールドを宣言する
  • パスをする
ホールドは相手と同じビッドを宣言したことになります。
オプション付きのビッドでホールドを宣言した場合、オプションの付けた数は守らなければなりませんが、後で付けるオプションを変えてもかまいません。
いずれか1人がパスをするまでビッドを続けます。
いずれか1人がパスをした場合、残ったプレイヤーが「親」になって、残りのプレイヤーでより左隣にいるプレイヤーと1対1のビッドをします。
ビッドは1人残るまで続けます。残った1人がデクレアラーになります。
4人全員パスした場合は配り直しになります。その場合ディーラーは交代しません。
特殊な宣言
✅キーカー:手札に絵札(K,Q,J)が1枚もないときのみ宣言できます。Aはあってもかまいません。
キーカーは4と5の中間の強さになります。キーカーは全5トリック取るという宣言になります。
キーカーは全トリック成功すれば10点、失敗すると-20点になります。
キーカーはルーテンを付けることができます。
ルーテンを付けた場合、得失点は倍になります。
✅ズィーペナーフィプス:手札に「7」が4枚、Aが1枚あるときのみ宣言できます。この宣言をした瞬間、該当のプレイヤーは手札を見せて30点獲得します。
ズィーペナーフィプス宣言した場合、プレイすることなく1ディール終了となります。
ズィーペナーフィプス宣言は、手札の交換の後でも宣言できます。


プレイ

キーカーについては後述します。
デクレアラーはプレイする前に、ハンドと交換するかしないかを選択します。
ただし、ビッドで「ハンド」をオプションで付けた場合、ハンドとの交換はできません。
交換しなかった場合、自動的に「ハンド」がつきます。
交換する場合は、ハンドの2枚を手札に加えた後、2枚裏向きにして捨て札にします。
その後、デクレアラーは切り札を宣言します。
ただし、ビッドでルーテンをオプションで付けた場合、が自動的に切り札になります。切り札の宣言は不要です。
切り札をにした場合、自動的に「ルーテン」がつきます。
デクレアラーが最初のリードプレイヤーになります。
リードプレイヤーは手札から好きなカードを1枚、表向きにして場に出します。
以降リードプレイヤーが出したスートがあれば、必ずそのスートを表向きにして場に出します。
該当のスートが複数枚ある場合は、その中から好きな1枚を表向きにして場に出します。
ない場合は、切り札を含めて好きなカードを出せます。
全員出し終わった後、このトリックの勝者を決めます。
  • 切り札が出ていない場合は、リードプレイヤーが出したスートで、一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
  • 切り札が出ている場合は、切り札スートで一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
勝ったプレイヤーは出したカードを裏向きにして、自分の脇に縦に置きます。
負けたプレイヤーは出したカードを裏向きにして、自分の脇に横向きにして置きます。
勝ったプレイヤーが次のリードプレイヤーになります。
デクレアラーはビッドで宣言したトリック数に達していて、かつ1トリックも負けていない場合、このまま続けることができます。
続ける場合は、全トリックを取ることになります。この場合、自動的に「ドゥルヒ」がつきます。
止める場合は、他のプレイヤーにわかるように止めることを宣言します。
デクレアラーが止めるを宣言した場合、またはデクレアラーが宣言したトリック数を取れないことがわかった時点で1ディール終了します。

キーカー
デクレアラーは、左隣のプレイヤーに絵札(K,Q,J)が1枚もないことを確認してもらいます。
その後デクレアラーはハンド2枚と配り残りの3枚を手札に加えた後、裏向きにして5枚捨て札にします。
手札の交換するかしないかは自由です。交換してもしなくても得失点に影響はありません。
デクレアラーは手札を交換した後、全トリック取る自信がなければ降参することができます。
降参した場合、-5点になります。
降参しなかった場合、デクレアラーは切り札を宣言します。
ただし、ビッドでルーテンをオプションで付けた場合、が自動的に切り札になります。切り札の宣言は不要です。
切り札をにした場合、自動的に「ルーテン」がつきます。
また交換した後(交換する前)、手札が「7」4枚、「A」1枚の場合、ズィーペナーフィプスを宣言します。
宣言した後、他のプレイヤー全員に手札を公開します。
この宣言により30点獲得し、プレイせずに1ディール終了します。
デクレアラーが最初のリードプレイヤーになります。
プレイの仕方は、上述と同じです。
全トリック終了するか、またはデクレアラー以外のプレイヤーが1トリック取ったシュナカンに1ディール終了します。


得失点

1ディール終了後、デクレアラーのみが得失点を獲得します。
オプションを付けなかった場合デクレアラーが成功した場合、宣言したトリック数が得点になります。
オプションを付けている場合は、オプション1つごとに2倍します(2倍、4倍、8倍)。
失敗した場合、デクレアラーは上記の得点分の2倍が失点になります。
キーカーの場合、成功は10点、失敗すると-20点になります。
キーカーでルーテンを付けた場合、得失点は倍になります。
キーカーで降参した場合は、-5点になります。
ズィーペナーフィプスは30点獲得します。
得失点をまとめると、次の表になります。

ゲーム終了

ゲーム終了は特に決まっていません。
プレイする前にディール数を決めてください。
事前に決めたディール数など終了後、ゲーム終了になります。
得点が最も高いプレイヤーの勝利になります。


3人プレイ

3人の場合も各プレイヤーに5枚ずつ配ります。
テーブル中央に裏向きで置くハンドも2枚です。配り残りは8枚になります。
キーカーを宣言した場合、左隣のプレイヤーに手札に絵札を確認してもらいます。
その後手札5枚を裏向きに捨て、ハンド2枚と配り残り8枚、計10枚を手札にします。
10枚の手札から5枚を捨て札にしてから切り札を決めます(または降参します)。
手札の交換するかしないかは自由です。
上記以外は4人と同じです。

トーナメント

トーナメント戦では可能な限り4人ずつ座ります。
参加人数によっては3人1テーブルにして調整します。
トーナメント戦では4人の場合100ディール、3人の場合は120ディールプレイします。

最低ビッド

ビッドで宣言する最低トリック数を3以上に変更します。

コントラ・リコントラ

デクレアラーが切り札を宣言した後、他のプレイヤーは誰でも「コントラ」を宣言できます。
コントラに対し、デクレアラーはレコントラを宣言できます。
コントラは得失点をさらに2倍にします。
レコントラは得失点をさらに4倍にします。
コントラ・リコントラはトーナメント戦では採用されていません。



グローナスペのフィプセン(Fipsen in Großenaspe)

3~5人までプレイできます。最初に4人プレイのルールを説明します。
グローナスペのフィプセンでは、各スート2~6とジョーカーを除いた32枚を使用します。このゲームではシャッフル後のカットは行いません。
ディーラーは時計回りに各プレイヤーに3枚、裏向きのまま配った後、テーブル中央に2枚裏向きに配ります。
その後各プレイヤーに2枚ずつ、裏向きのまま配ります。
配り残りの10枚は裏向きのまま、テーブルの脇に置きます。この2枚をスカートと呼びます。
ディーラー左隣のプレイヤーからビッドをするか、またはパスをします。
ビッドは時計回りに行います(1対1の勝ち抜き形式ではありません)。
ビッドは最低1以上から5までになります。
オプションとして♣を切り札にする「グーテ」を付けることで、同じビッド数より強いビッドになります。
すでにビッドされている場合は、直前のビッドより強いビッドをするか、または同じビッドに「グーテ」をつけるか、またはパスをします。
また特殊なビッドとして次の2つがあります。
  • キーカー:手札に絵札(K,Q,J)が1枚もない場合、このビッドを宣言できます。ビッドの強さは、4のグーテより強く、5よりも弱いビッドになります
キーカーにグーテを付けることができます。
キーカーを宣言した場合、 手札を5枚裏向きに捨て、スカーフ枚と配り残りの10枚を手札に加えます。その後、手札が5枚になるよう、裏向きにして捨て札にします。
手札の交換するかしないかは自由です。
手札の交換の後、切り札を宣言します。♣を切り札にした場合は、自動的にグーテがつきます。
キーカーは全5トリック取れば成功になります。成功した場合、10点獲得します。グーテをオプションに付けた場合(または♣)を切り札にした場合、 得点は20点になります。
プレイする前に降参することもできます。降参した場合、  他のプレイヤー全員に5点ずつ与えます。キーカーを宣言したプレイヤーの得点はありません。
  • フィプス:最も強いビッドになります。このビッドはスカート2枚と交換をしないで、全5トリックを取る宣言になります。フィプスにグーテを付けたビッドが最強のビッドになります。
フィプスの宣言した後、切り札を宣言します。♣を切り札にした場合は、自動的にグーテがつきます。
全5トリック取れば成功になります。成功した場合、20点獲得します。グーテをオプションに付けた場合(または♣)を切り札にした場合、 得点は40点になります。

ディーラー左隣のプレイヤーは最初のリードプレイヤーになります。
プレイは通常のフィプセンと同様です。
デクレアラーがビッドしたトリック数をとった時点で1ディール終了します。
ただし、デクレアラーが1度もトリックを他人に取れていない場合、その時点で続けることもできます。
続けた場合5トリックをビッドした扱いになります。
デクレアラーが1トリックもとっていない場合、デクレアラーが宣言したトリック数をとれないことがわかっていても、デクレアラーがトリックを取るまでゲームは続けます。
1ディール終了後、デクレアラーが宣言したトリック数を取れれば成功、取れなかった場合は失敗になります。
デクレアラーのビッドが成功した場合、ビッドで宣言したトリック数がそのまま得点になります。「グーテ」または切り札を♣にした場合、得点は倍になります。
デクレアラーが失敗した場合、デクレアラーが本来得られる得点を他のプレイヤー全員が獲得します。デクレアラー自身の得点はありません。
もしデクレアラーが1トリックも取れなかった場合、他のプレイヤー全員は5点獲得します。「グーテ」または切り札を♣にした場合、他のプレイヤー全員は10点獲得します。

バリエーション

非公式ルールですが、デクレアラー以外のプレイヤーはプレイする前に、テーブルをノックをすることで、得点を倍にすることができます。
✅3人ルール:Karo Fipsenとして知られています。上述のフィプセンと同様、♦7だけを使った25枚でプレイします。はっきりしたルールはわかっていません。
✅5人ルール:交代で1人抜けて4人でプレイするか、または5人のままで各プレイヤーに5枚ずつくばり、スカート2枚をテーブルに置きます。配り残りは5枚になります。それ以外は4人プレイ時と同様です。
 


テディングハウゼンのフィプセン(Fipsen in Thedinghausen)

5人プレイのみになります。
上記のフィプセンとはかなり異なる点が多いゲームです。
ビッドは行いません。
テディングハウゼンのフィプセンでは、各スート2~6とジョーカーを除いた25枚を使用します。
各プレイヤーは、ゲーム開始時にパンの代金として80セントを支払います。
ゲームの勝者は、賞品であるパンの引換券を受け取ります。もらったパンはその場で食べたり、家に持ち帰っても良いそうです。
ディーラーは時計回りに各プレイヤーに3枚、裏向きのまま配った後、配り残りの1枚を表向きにしてテーブルに置きます。
このカードのスートが切り札になります。
その後各プレイヤーに2枚ずつ、裏向きのまま配ります。配り残りの6枚は裏向きのまま、テーブルの脇に置きます。
切り札表示のカードが「A」の場合、切り札の「7」を持っているプレイヤーは、切り札表示のカードと交換することができます。
ディーラー左隣のプレイヤーが最初のリードプレイヤーになります。
プレイは上述のフィプセンと同じです。
このゲームは、通算10トリック以上取ったプレイヤーの勝利となり、1ゲーム終了となります。
1ゲーム終了後、賞品を受け取り再度リセットしてゲーム続けるそうです。
全5トリック取った場合、「ヘドウイッグ(Hedewig)」(レーズンパンのような菓子パンかと思われます)を5つ受け取ります。
また他のプレイヤー全員から1ユーロを受け取ります。その後ゲームを続けます。

メクレンブルグのフィプセン(Mecklenburg Fips)

メクレンブルグの方言辞書に2つのルールが記載されているそうです。
はAのみで、他のスートは各スート2~6とジョーカーを除いた25枚を使用します。
各プレイヤーに5枚ずつ配り、残った5枚はテーブルの中央に裏向きのまま置きます。このカードを「ダット」と呼びます。
2つのルールとも残念ながら得点の明記はありません。

📔アンセガー・フィプス(Anseger Fips)

上述のフィプセンの祖先あたるゲームと思われます。
ビッドは最低1以上から5まで行います。
オプションビッドとしてを切り札にする「ルーテン」を付けることで、同じビッド数より強いビッドになります。
全員パスした場合は配り直しになります。
5をビッドすると「フィプス」になり、「ルーテンの5」が最強のビッドになります。
おそらく「5」をビッドすると、ダットとの交換はできないと思われます。

📔ダット・フィプス(DuttFips)

誰もビッドしなかった場合(全員パスした場合)、ディーラー左隣のプレイヤーはダット5枚を手札に加え、手札が5枚になるよう捨て札にします。
ディーラー左隣のプレイヤーは、単独で最多トリックを散る必要があります。
他のプレイヤーは上記の権利を「ルーテン・ウーバー」宣言し、その権利を奪うことができます。ダットとの交換はできますが、切り札はになります。
5、「ルーテンの5」が最強のビッドになります。この宣言でダットと交換できるかどうかについては、はっきりしていません。



参考文献・参考サイト

・トランプ大全 赤桐 裕二 スモール出版

閑話休題
フィプセンの配り残りの3枚の呼び方、祖先と思われるメクレンブルグのフィプセンでは、「ダット」と呼んでいることより、ダットなのではないかなと想像しています。

2021年12月14日火曜日

あなたの知らないトレセッテ(Tresette)

今回はトレセッテとそのバリエーションゲームを紹介します。
また本来はシチリアデッキを使いますが、通常のトランプで説明します。
シチリアデッキではC(キャバリエ)があり、その一方でJがありません。
通常のトランプを使うにあたり、CをJに読み替えて説明します。
想定より長くなりましたので、インデックスを作りました。

インデックス




トレセッテ(Tressette)

トレセッテは、4人ペア戦のトリックテイキングゲームです。
トレセッテはスリー・セブンという意味のようです。

👉人数:4人ペア戦。向かい合った2人がパートナーになります。

👉使用するトランプ:通常のトランプより各スートの8~10とジョーカーを除きます。全部で40枚になります。

👉目的:21点以上先取

👉カードの強さ:3>2>A>K>J>Q>7>6>5>4

シチリアデッキから読み替えると上記の強さになりますが、カードの強さを次のように変えてもかまいません。

カードの強さ:3>2>A>K>Q>J>7>6>5>4

切り札はありません。
このゲームは反時計回りに進行します。



得点

このゲームでは次のカードを取ると得点になります。
  • A:各1点
  • 3,2,K,J,Q:各1/3点
上記以外のカードは得点がありません、
また最後のトリックを取ると1点になります。

ディール

ジャンケンなど任意な方法で最初ディーラーを決めます。
以降反時計回りで持ち回りで交代します。
ディーラーはシャッフルした後、反時計回りに5枚ずつ、各プレイヤーの手札が10枚になるように配ります。

プレイ

ディーラーの右隣のプレイヤーが最初のリードプレイヤーになります。
リードプレイヤーは手札から好きなカードを1枚、表向きにして場に出します。
以降リードプレイヤーが出したスートがあれば、必ずそのスートを表向きにして場に出します。
該当のスートが複数枚ある場合は、その中から好きな1枚を表向きにして場に出します。
全員出し終わった後、このトリックの勝者を決めます。
リードプレイヤーが出したスートで、一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
勝ったプレイヤーは場に出ている全てのカードを裏向きにして、自分の脇に集めておきます。
勝ったプレイヤーが次のリードプレイヤーになります。
全員の手札がなくなるまでプレイを続けます。
全員の手札がなくなったら、1ディール終了です。

手役

最初のトリック終了後、手札に次のような組合せがあれば宣言して、得点にすることができます。
得点の組合せは、最初のトリックで自分が出したカードを組み合わせてもかまいません。
  • 「3」が4枚、「2」が4枚、「A」が4枚:各4点
  • 「3」が3枚、「2」が3枚、「A」が3枚:各3点
  • 同じスートで3-2-Aの組合せ:各3点
3枚の手役の宣言をする時、手札にどのスートがないかを言う必要があります。
例えば、♣3-♠3-3の手役を出すとき、手札に♦️が1枚もない場合、「♦️は1枚もありません」と言う必要があります。
3-2-Aの組み合わせを宣言するときは、そのスートを宣言します。
また3-2-Aの組合せで使ったカードを、同じランク3枚または4枚で使って得点してもかまいません。
例えば♣3-♣2-♣Aを宣言後、♣3-♠3-3を宣言し、計6点を獲得できます。



シグナル

そのトリックでリードする際、次のシグナルを使うことが許されています。
  • テーブルをノックする、または「ブッソ」を宣言する:リードで出されたスートの一番強いカードをプレイして、勝ったらそのスートでリードしてもらう
  • 「ピオンボ」を宣言する、または手を上げて手札をテーブルに投げ出す:自分がリードで出したスートがその1枚で最後、つまりもう手札にはそのスートがないという意味になります。
  • 「ストリシオ」を宣言する、または出したカードをテーブル上で滑らせる:自分がリードで出したスートのカードが、KまたはKより低いカードが手札に1枚以上あることを意味します。

ゲーム終了

1ディール終了後、いずれかのチームの合計点が21点以上であれば、そのチームの勝利となりゲーム終了となります。
複数ゲーム行う場合は、次のゲームポイント制を導入することもできます。
  • カポット:いずれかのチームが合計で全10トリック取った場合、2ゲームポイント獲得
  • ストラマッチオ:いずれかのチームが全トリック取らずに、全てのカードの得点を獲得した場合(最後のトリックは相手チームが取っていてもかまいません)、3ゲームポイント獲得
  • カポトーネ:1人で全10トリック取ったチームは、6ゲームポイント獲得
  • ストラマッツォーネ:相手チームが1トリックのみで、かつ3人が1点未満(この3人のいずれかが最後のトリックの得点を獲得していてもかまいません)で、1人が他の点数を全て獲得した場合、8ゲームポイント獲得


バリエーション


トレセッテ・コン・ラ・キアマータ・デル・トレ(Tressette con la Chiamata del Tre)

パートナー戦ではなく、4人個人戦にすることもできます。
原文では年長者が最初のリードプレイヤーになりますが、最初のリードプレイヤーは適当な方法で決めて良いと思います。
各プレイヤーの手札が10枚になるよう配った後、リードプレイヤーは最初のリードをする前に、手札の中で「3」がないスートを1つ宣言します。
複数のスートで「3」がない場合は、いずれか1つのスートを宣言します。
宣言したスートの「3」を持っているプレイヤーがパートナーになります。
ただし、パートナーになったプレイヤーは、自分がパートナーになったことを黙ったままプレイします。
そのカードをプレイした時に、初めてパートナーであることが明らかになります。
原文に明記はありませんが、もしリードプレイヤーが「3」4枚持っていたときは、その中で好きなスートを宣言し、パートナーがいない状態でプレイすると思われます。
通常はチップを使用し、勝者(または勝者チーム)と敗者または(敗者チーム)でチップのやりとりをするそうです。
上記以外はトレセッテと同じです。

ロベルシーノ(Rovescino)

プレイ人数が3~8人までになります。
このゲームでは失点制、つまりできるだけ得点を取らないようにします。
17世紀初頭に作られたゲームで、リベルシ、ハーツの祖先に当たるようです。
イタリア全土でプレイされていたそうです。
各プレイヤーの手札が均等になるよう配ります。余ったカードは「モンテ」として、裏向きにしてプレイの邪魔にならない所に起きます。
4,5,8人の場合でもあえて配り残りが出るように配ってもかまわないと思われます。
プレイはトレセッテと同じですが、最後のトリックを取ったプレイヤーは、取ったカードと「モンテ」を取ります。
取ったカードの得点を集計します。1/3点、2/3点となった場合は切り捨てず、次のディールに持ち越します。
通常はいずれか1人以上のプレイヤーの合計点が21点以上になったら、ゲーム終了となり得点が最も低いプレイヤーの勝ちになります。
4人以上でプレイする場合は、合計点が21点以上になったら、脱落にし、3人になるまでプレイを続けることもあります。
手役により得点はないと思われます。上記以外はトレセッテと同じです。

チャパノ(Ciapanò)

プレイ人数が3~5人までになります。
このゲームでは失点制、つまりできるだけ得点を取らないようにします。
ルールは上記のロベルシーノと同じですが、次の点が異なります。
  • 全てのカードの得点(最後のトリックの得点は含まれません)を取った場合、そのディールでの該当プレイヤーの得点は0点になり、他のプレイヤー全員に11点が与えられる。
  • 最初にプレイする前にカードの交換をします。手札の中から1枚を選んで自分の右隣に渡します。受けとった競技者は、同様に1枚を右隣に渡します。最後の1人は1枚を自分の横に置きます。このカードは最後のトリックの勝者のものになります。
  • チャパノのローカルルールでは、♣Aを取ると11点になります。このルールを採用する場合は、いずれか1人以上のプレイヤーの合計点が101点以上になったら、ゲーム終了となり得点が最も低いプレイヤーの勝ちになります。

トラヴェルソーネ(Traversone)

プレイ人数が2~8人までになります。
このゲームでは失点制、つまりできるだけ得点を取らないようにします。
ロベルシーノとほぼ同じルールですが、次の点が異なります。
  • ♣Aを取ると11点になります。
  • 配り残ったカードは全員に公開されます。
  • 点数制(21、31、41、または100)またはディール数のどちらかになります。ディール数が設定されている場合、最も低いスコアを持つ人が勝ちます。一方、スコア制が設定されている場合は、その点数に達したらゲーム終了にするか、またはその点数以上になったプレイヤーを脱落し、サドンデス制にするかを選択します。
  • 最後のトリックを取ったプレイヤーが全てのカードの得点21点を取った場合、そのディールでの該当プレイヤーの得点は0点になり、他のプレイヤー全員に21点が与えられます。
トラヴェルソーネには次のローカルルールがあります。いずれかを組み合わせてルールに入れても良いでしょう。
  • 手札に手役がある場合は、該当の点数を取った得点から差し引くことができます。
  • いずれかのプレイヤーがフォローできなくなるまで、♣をプレイできないルールもあります。
  • 手札に得点になるカードが1枚もない場合、そのディール終了後、10点が与えられるか、または最後のトリックを取ったプレイヤーと得点を分け合います(端数切り捨て)。
  • 配り残りのカードと交換するルールもあります。この場合、最初の配り残りのカードは裏向きのままにすると思われます。
トラヴェルソーネはAndoroidアプリであそべるようです。

トレシェタ(Trešeta)

主に4人ペア戦になります
クロアチアのアドリア海沿岸部、特にダルマチア、またモンテネグロのアドリア海沿岸部、とくにコトル湾でもプレイされているそうです。
プレイの進行は時計回りになりますが、ルールは上述のトレセッテと同じです。

2人ゲーム

2人でプレイする場合、各プレイヤーに10枚ずつ配ります。
残ったカードは裏向きにして山札になります。
各トリックで勝ったプレイヤーから手札の補充を行います。
勝ったプレイヤーは、山札の一番上カードを相手に見せた後手札に加えます。
その後負けたプレイヤーは山札の一番上のカードを、相手に見せることなく手札に加えます。



参考文献・参考サイトなど

他のサイト・書籍での主な相違点

👉手役については、ナポレターナ(Napoletana)というバリエーションゲームとしている記述もあります。
書籍によってはバリエーションではなく、通常ゲームとして組み入れられている記述もあります。
👉手役の宣言は最初のトリックの後、と説明しましたが、ゲームファーム、David Parlettの"Original Dictional Games"では、最初のトリックをプレイする前に手役の宣言を行います。
👉合計点が21点以上達していると思ったら、勝利宣言し、21点以上に達していればそのチームの勝利になり、万が一21点未満だった場合、相手チームに11点が献上される、ルールもあります。
👉最後のトリックは1点ではなく、1/3点でプレイするルールもあります。

参考文献・参考サイト

・"Sicilian Card Games: An easy-to-follow guide"  Veronica Di Grigoli
・”Italian Card Games for All Ages How to play Briscola, Scopa and many other traditional Italian card games” Long Bridge Publishing
・"Original Dictional Games" David Parlett
・"Penguin of Card Games: Everything You Need to Know to Play Over 250 Games" David Parlett

2021年12月8日水曜日

Tuppi

Tuppiはフィンランドの4人ペア戦のトリックテイキングゲームです。

ミネソタホイストの変種のようです。

Tuppiはフィンランド語で「作業用のナイフの鞘」という意味だそうです。


👉人数:4人。ペア戦になります。向かい合った2人がパートナーになります。

👉使用するトランプ:通常のトランプ1組よりジョーカーを除きます。
全部で52枚になります。

👉目的:52点以上先取

👉カードの強さ:A>K>Q>J>10>9>8>7>6>5>4>3>2

切り札はありません。
このゲームは時計回りに進行します。


ディール


適当な方法で最初のディーラーを決めます。
以降ディーラーは時計回りに持ち回りで交代します。
ディーラーは各プレイヤーの手札が13枚になるよう、裏向きのまま配ります。

オークション

このオークションはプレイするゲームモードを決めるために行います。
各プレイヤーは、手札から絵札(J,Q,K)以外で好きなカードを1枚裏向きにして場に出します。
4人全員出し終わったら、ディーラー左隣のプレイヤーから出したカードを表向きにします。
表向きにしたカードが赤のスート()だった場合、それ以降のプレイヤーは出したカードを表向きにせずに手札に戻します。
  • 4人のうちいずれか1人でも赤のスート()を出していれば、ゲームが「ラミ」になります。
  • 4人全員が黒のスート(♣か♠)だった場合は、ゲームが「ノロ」になります。
ゲームが「ラミ」の場合、最初に赤のスート()を出したプレイヤーがデクレアラーになります。最初に出したプレイヤーの判定は、ディーラー左隣のプレイヤーから時計回りの順で判定します。
つまりディーラー左隣のプレイヤーがを出していれば、そのプレイヤーがデクレアラーになります
以降デクレアラーとそのパートナーを「デクレアラーチーム」、もう一方のペアを「ディフェンダーチーム」と呼びます。
ゲームが「ラミ」になった場合、相手チームは「ソロ」を宣言することができます。
ゲームモードの説明は次の通りです。
  • ラミ:デクレアラーチームが取ったトリック数が6トリックを超えるごとに4点
    • 7トリック:4点 、8トリック:8点、9トリック:12点、10トリック:16点、11トリック:20点、12トリック:24点、13トリック:28点
  • ラミ: ディフェンダーチームが取ったトリック数が6トリックを超えるごとに8点 
    •  7トリック:8点 、8トリック:16点、9トリック:24点、10トリック:32点、11トリック:40点、12トリック:48点、13トリック:56点
  • ノロ:7トリック未満。
    • 6トリック:4点 、5トリック:8点、4トリック:12点、3トリック:16点、2トリック:20点、1トリック:24点、0トリック:28点 
  • ソロ:宣言したチームが1トリックも取らなければ24点。宣言したチームが1トリックでも取って終った場合、相手チームに24点。

オークションが終了した後、各プレイヤーは場に出したカードを手札に戻します。 

プレイ

※ソロについては後述します。
ゲームモードが「ラミ」の場合、デクレアラーが最初のリードプレイヤーになります。
ゲームモードが「ノロ」の場合、ディーラー左隣のプレイヤーが最初のリードプレイヤーになります。
リードプレイヤーは手札から好きなカードを1枚、表向きにして場に出します。
以降リードプレイヤーが出したスートがあれば、必ずそのスートを表向きにして場に出します。
該当のスートが複数枚ある場合は、その中から好きな1枚を表向きにして場に出します。
全員出し終わった後、このトリックの勝者を決めます。
リードプレイヤーが出したスートで、一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
勝ったプレイヤーは場に出ている全てのカードを裏向きにして、自分の脇に集めておきます。
勝ったプレイヤーが次のリードプレイヤーになります。
全員の手札がなくなるまでプレイを続けます。
手札がなくなったら、1ディール終了です。
ソロ
ソロ宣言したプレイヤーと相手チームの3人だけがプレイします。
ソロ宣言したプレイヤーのパートナーはプレイすることはできません。
ソロ宣言でも13トリック行います。
ソロ宣言では手札3枚しか使いません(3トリックのみ行います)。*1
捨て札にするという明記はないため、手札は13枚のままプレイすると思われます。
ソロ宣言のみカードの強さが次のように変わります:K>Q>J>10>9>8>7>6>5>4>3>2>A
ソロ宣言したプレイヤーは1枚だけパートナーと手札交換を行うことができます。
手札の交換をするかしないかは自由です。
交換する場合は、まずソロ宣言したプレイヤーが手札から1枚裏向きにして場に出します。
パートナーは場に出たカードを見ずに、手札から1枚裏向きにして、ソロ宣言したプレイヤーに渡します。
場に出たカードとパートナーの手札は、裏向きにしてプレイの邪魔にならない場所に起きます。
「ラミ」でデクレアラーになったプレイヤーが最初のリードプレイヤーになります。またデクレアラーのパートナーが次にプレイします。
つまりソロ宣言したプレイヤーは最後にプレイします。
リードプレイヤーは手札から好きなカードを1枚、表向きにして場に出します。
以降リードプレイヤーが出したスートがあれば、必ずそのスートを表向きにして場に出します。
該当のスートが複数枚ある場合は、その中から好きな1枚を表向きにして場に出します。
全員出し終わった後、このトリックの勝者を決めます。
リードプレイヤーが出したスートで、一番強いランクを出したプレイヤーが勝ちます。
勝ったプレイヤーは場に出ている全てのカードを裏向きにして、自分の脇に集めておきます。
勝ったプレイヤーが次のリードプレイヤーになります。
リードプレイヤーが変わっても、ソロ宣言したプレイヤーは最後にプレイします。
ソロ宣言したプレイヤーがトリックをとるか、または全員の手札がなくなるまでプレイを続けます。
ソロ宣言したプレイヤーがトリックを取った時点、または手札がなくなったら、1ディール終了です。

*1:Wikipediaでは3トリックとありますが、Board Game Geekでは全トリック(13トリック)と記載されています。おそらく後者の13トリックが正しいルールかと推測いたします。


ゲーム終了

このゲームでは常にどちらか1つのチームしか得点が入りません。
1ディール終了後、得点を取ったチームが相手チームの場合、もう一方のチームはそれまでの得点を全て失います。
つまり連勝しない限りは得点を累積することはできません。
どちらかのチームの合計点が52点以上になった時点でゲーム終了となり、そのチームの勝利となります。
ゲーム終了がかなり難しいゲームです。
得点がなくなるルールを無視して、事前にディール数を決めてプレイしても良いかもしれません。

参考サイト